Interview008

コモンズ投信株式会社
代表取締役社長兼最高運用責任者

伊井 哲朗さん

ー今回は、コモンズ投信の伊井社長にお越し頂きました。先日、R&Iファンド大賞・NISA/国内株式部門優秀賞を受賞されました。おめでとうございます。
受賞のポイントはどの辺りにありますか?

 僕は、いつも「資産運用」と「資産形成」は、そもそも全然違う、と言っています。
 資産運用は、既に資産を持っている方々の世界です。こちらは、今ある資産をどういう風に活用しようかという形なので、いわゆる資産運用サービスを求めておられます。したがって、提案する金融機関側も、より金利の高いものに移しませんかとか、あるいは価格が上昇しそうな株式やリートこちらですよ、というような話が中心になるでしょう。
 一方、二十代から四十代を中心とした現役世代の人たちは、まとまったお金がありません。したがって、これから資産をつくっていくという考え方が重要になります。こちらは、コツコツと、少しずつ、時間をかけて、より確実に賢明に、といった世界です。
 ところが、世の中ではこのどちらも一緒に語られているように思います。金融機関も、資産形成を必要とされている若い現役世代の方々に、資産運用の話を持ちかけてしまうケースが多いのです。
 資産形成、資産づくりということでいうと、将来の教育資金とか年金が心配なので、資産を作っていきたいということなので、これはもう積み立てしかない訳ですね。積み立てで将来のために10年とか20年で積み立てをしようかということになると、長期間運用している投資信託が最適なわけです。ところが、現在日本には5600本近い投資信託があるわけですが、この中で長期間運用することを前提に作られている投資信託はごく僅かしかありません。全投資信託の平均運用期間は、2013年で1.7年、2014年は2年と非常に短い。実は投資信託も、資産運用を前提に作られていて、資産形成を考えて作られてこなかった訳です。
 そこで、コモンズ30は30年を前提に30社に絞った投資戦略を取っています。従来の投資信託が担ってこなかった「資産形成」に最適な設計となっており、そのオリジナリティが評価されたのではないかと思います。

ーコモンズ投信のセミナー参加者は、とても仲が良いと聞きました。
 なぜか、セミナー参加者同士が仲がいいですね。先日は岩手への旅行を兼ねたセミナーを企画したら全国から60人が集まりました。オフ会とか言って、我々の知らない所で、参加者同士が食事会を催したりもしているようです。
 当然元々はお互い全く知らない人同士で、特に当社のセミナーは一人で参加される方がほとんどなのですが、セミナーに来て、意気投合するようです。
 実際、先週も10名程でセミナーを開催しました。最初は皆さん、黙って下を向いておられる。皆さん、誰かに相談したり誘われたりして来た訳ではなく、自分で色々調べて、半分恐る恐る来ました、という感じ。そこで、最初に僕の方から「今、どういう事をお考えですか」というような質問を全員にしてみる。そうすると、将来のお金が不安だし、子供の教育資金も不安だし、でもどうしていいか分からないし、大手の証券会社には縁がないし、なんか怖いし、などと話してくださる。次の方も似たような事をおっしゃる。お互いに、あれ、みんな考えていること、感じているところは一緒なんだ、という事にそこで気づき、共感を得ていくようですね。私ひとりじゃないんだ、と。
 また、もう一つ僕が感じるのは、ブランドに対する価値観が昔と大きく変わった、という点でしょうか。9.11やリーマンショックがあって、ブランドの力が弱くなっているように思います。僕らのようなバブル世代だと、ブランドものにいくらでもお金を払いますよといったノリでしたが、今の現役世代の方々は、自分がいいなと思うのであればブランドは全然関係ないとか、無駄な消費をするよりも自分に投資をするとか、そのような昔の世代にはない雰囲気がある。
また、ITリテラシーも高くて、金融に対してもそれなりに興味があって、自分で少し情報収集をして少し勉強しようかという意識で、自分の意志で動いている。だから、私たちのような小さい投信会社のセミナーも、気兼ねなく足を運んで来られる。
 参加者の皆さんは、どちらかというとあまり社交的ではない方が多いように見えるのですが、そのようなプロセスで来られている方々が、ひとたびお互いに共感を得ると非常に強い絆が生まれるようです。似た者同士が集まっていて、私はここに居て良いんだとか、この集団の中に居ると安心するとか、そういった感覚なのではないかと思います。

ーセミナーは、どれくらいの頻度で行っておられるのですか?
 最低3ヶ月に1回やろう、と思っています。セミナーのスタイルも様々で、初めての方々向けにご説明する内容から、既に投資頂いているファミリーの方々と一緒に工場を見学に行ったりします。先日は投資先のベネッセの運営する直島に皆さんと伺いました。今度は、ヤマト運輸の羽田クロネゲートに子供たちと一緒に親子でツアーを組んでいます。投資をして企業を応援しながら、またその投資先に伺って子供たちも交えて社会勉強も行う、というような活動も、コモンズならではの活動ではないかと思っています。

ー最後にひとことお願いします。
 コモンズ投信は、オフィスが麹町にある地元企業です。様々なセミナーも開催しておりますので、もしご興味があれば一度足を運んでみてください。神楽サロンでもセミナーを近々開催予定です。どこかでお会いできることを楽しみにしております。

伊井 哲朗さんプロフィール

いい てつろう
関西学院大学法学部政治学科卒業。山一證券入社(1984年)。その後、メリルリンチ日本証券(1997年)を経て、コモンズ投信株式会社を創業(2008年)、代表取締役社長に就任。2012年6月より最高運用責任者を兼務。現在に至る。
著書に「普通の人」が「日本株」で年7%のリターンを得るただひとつの方法(講談社)、「市場」ではなく「企業」を買う株式投資(きんざい 共著)がある。

『コモンズ投信』公式サイト
www.commons30.jp/