自然布展

日本各地に根差した自然布たち

草や木から採取した自然繊維を用いた布を我々は自然布と呼んで います。

大麻布以外にも、アットゥシ織、しな布、藤布、葛布、太布、紙 布、芭蕉布、苧麻布など多種多様な自然布があります。いずれも 素材から繊維を採り、長い糸とするまでに長い時間と大変な手間 を要しますが、かつては日本の広い範囲で作られ、衣食住の一部 に在ったものでした。

また、これほどまでに多くの自然繊維を使って織物をしている国 は世界中を見ても日本をおいてありません。

ほんの50年前までは、着物や野良着、袋などとして生活の中で 様々な用途・形態に用いられてきましたが、時代の変化とともに、 その姿を見ることはほとんどなくなりました。 今では、わずかに産地や保存会で作られるのみとなりましたが、 素材によっては、産地以外の場所で試作されたり、現代の作家が 糸作りから取り組み、用いている場合もあります。

長い時間をかけて培われた、この国の手仕事の素晴らしさは、大 量生産の洋服ではけっして味わうことのできないものです。先人 の智恵、日々の営み、風土への慈しみがこめられ、織りからは生 き生きとした植物の生命力を感じとることができます。

一枚の布から見えてくる「自然、人間、歴史」の物語を心ゆくま でお楽しみください。

6月の展示品

  • アイヌ民族の着物2点と組紐、帽子、反物
  • しな布の穀物袋、はばき、反物、のれん
  • 藤布の着物と反物
  • 葛布の道中着2点と反物
  • 太布の半着、角袋、反物
  • 紙布の着物、諸紙布、紙糸
  • 芭蕉布の着物2点
  • 大麻布のこぎん刺し着物、対馬麻縞着物、汗はじき、裂き織り祝い着、裂織反物、襤褸布団皮
  • 芋布の被衣、子供用神事装束、反物

展示内容はひと月毎に入れ替わります

展示品一部ご紹介

大麻布(タイマフ)

中央アジア原産とされるクワ科の一年草の大麻(Cannabis sativa L.)

  種まきから約110日の短期間で高さ2.5mの背丈に育つ。日本でも古く から栽培されており、その強靭な繊維で耐水、耐久性に優れていることから 衣だけでなく、装身具、生活用具、漁業、狩猟、神事など日常生活の多様な 用途に使用されてきた。

 大麻にまつわる伝承は特に綿花の育たなかった東北地方に多く残されており、 「こぎん刺し」や「菱刺し」など芸術レベルにまで高められた民芸品が今も なお伝承され、また、当時の衣料も数多く保存されている。

 江戸時代には藍・紅花とともに「三草」と呼ばれ実生活に有用な作物として 全国で栽培されてきたほか、神にささげる衣は、大麻や苧麻の繊維で織った ものが清らかな布とされ、神道儀礼やお祭り、御祝いごとには欠かせないも のとして用いられた歴史をもつ。

 自然繊維の中で、大麻と苧麻ほど古くから人々の生活とともにあった植物は ないと言ってよい。縄文時代、弥生時代、古墳時代の遺跡から出土したもの をはじめ、奈良時代になって税として納められた布などは大麻布が圧倒的に 多いのだという。

「全国古代織産地連絡会提供」

展示品一部ご紹介

大麻地 襤褸布団皮

大麻布

厚手の大麻裂を継きぎ合わせた襤褸布団皮。 現在のパッチワークの原型といわれる。木綿が普及すると、ほとんどが木綿地に変わっていったことを考えるとそれなりに古い時代のものと予想される。裂織りや古手木綿なども使用され、木綿の時代を迎えつつあった頃のものと思われる。麻布時代が覗かれる貴重な一点だといえる。

推定産地 / 東北地方
推定年代 / 戦前
主素材 / 大麻 性別 / 男
染め・染料 / 藍 組織・織柄 / 平織

展示品一部ご紹介

アットゥシ織

主にオヒョウの木の内皮から取った繊維で糸を作り、アイヌの織物・衣服として用いられた。

アットゥシの布地は無地が多いが、紺や白の木綿糸、 アットゥシの染めた糸で縞にすることもある。

紺または黒の木綿裂を切伏せし、この上に木綿糸で鎖縫 いや絡縫いの刺繍が施された衣服が数多く残されている。

アイヌの衣では、袖口・裾・襟回り・背中の刺繍は魔物 が入るのを防ぐために施されたといわれている。

「全国古代織産地連絡会提供」

展示品一部ご紹介

アイヌ帽子

アットゥシ織

シナの木の内皮で作られている帽子。黒の木綿に色糸で刺繍。鎖縫の文様

推定産地 / 北海道 推定年代 / 戦後
主素材 / シナ 性別 / 男
染め・染料 / 生成り 組織・織柄 / 平織

伊勢外宮前

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